バラの野生種は、100種類~200種類あるといわれています。 そのほとんどが北半球に自生しています。 今、親しまれている品種の改良に貢献した野生のバラは、日本、中国、シリア、イランに自生していた原種8種類から11種類がといわれています。 まさに美しさの原点ともいえるバラです。 こうした原種を、役立てて、この先もまた新しい品種が生まれるのかもしれません。
ローマ、ギリシャが原産地のバラ。「ガリカローズ」 ギリシャやローマ時代、その土地で長い間栽培されていて、保存食や薬、薬用花などで利用されてきました。 北イタリアのロンバルディアからアルプスを越えて現在のフランスの全域を含み、その地方全域をローマ人が「ガリア」と呼んでいたことに由来しています。 半八重咲きで香り高く、紅色や濃桃色のバラであることが特徴で、基本的には春のみの一季咲きです。 高さ1.3mくらいの木立性ですが、中にはつる性になるものもあります。 19世紀はじめ、フランスのマルメゾン宮殿には、150種類以上のガリカローズが栽培されていた記録が残っています。
白の花色とさわやかな香りを今の時代に伝えてくれたバラです。 イタリアの画家、クラーナハ(1472年-1553年)が描いた工房作、「聖ドロテア」は、園芸の守護聖人として知られており、画中に白いバラがあるのですが、これはアルバローズだと考えられています。 また、ギリシャ神話に登場する女神アフロディーテの誕生ともに生まれたバラとも言い伝えられるくらい、清らかで、知徳にすぐれた印象のバラです。 樹形は2メートル近く伸び、棘の少ない、明緑色の茎と、灰色の葉を特徴としています。
ダマスクローズ Damask Roseシリアの首都ダマスカスから運ばれたことから始まったバラです。 この種は、ティーローズよりも際立った芳香を有しているため、当時から栽培されていました。 バビロニア地方では、紀元前千二百年ごろ、バラ栽培が行なわれていた史実があり、そのバラがダマスクローズといわれています。
ダマスク系とガリカ系を祖とするバラ。「ロサケンティフォーリア」 100枚の花弁を持つとされています。 17世紀から18世紀の絵画の題材によく描かれていたバラです。 マリーアントワネットの専属女流画家だったルイーズ・ヴィジェ=ルブランは、肖像画にケンティフォーリアローズを入れて描いており、ロココのバラと言われています。 香りがよいので、現在でも南フランスやモロッコで香料用で栽培されています。
モスは、苔(コケ)のことです。 つぼみを覆っているガクの外側や花首に細かい腺毛がたくさんある姿が、コケのように見えることからモスローズと呼ばれるようになりました。 この種のほとんどは、ケンティフォーリアローズの突然変異で18世紀ころに出現したといわれています。 ピンクの濃淡で、八重咲きが多く、良く伸びるのでトレリスなどに誘引して育てることができます。
18世紀の終わりころ、中国の原産のコウシンバラなど4種類のバラがヨーロッパに持ち込まれました。 中国のバラはヨーロッパに新しい色彩と香りをもたらし、四季咲きという貴重な性質が加えられました。 その結果、ポートランド、ブルボン、ノワゼット、ティハイブリットパーペチュアル、ハイブリットムスクという系統が誕生しました。
雑種群 Hybrid seeds学名をつける基本単位がスピーシーズ(原種)、それのハイブリット(雑種)ということで、ハイブリッドスピーシーズと呼ばれる分類があります。 おもに、ハマナシ系のハイブリッド・ルゴサ、ロサ・モスカータ系のハイブリッド・ムスク、西アジアのロサ・フェティダ系のハイブリッド・フェティダ、ロサ・スピノシシマ系のハイブリッド・スピノシシマ、ロサ・エグランテリア系のハイブリッド・エグランテリアなどがります。 これらは、原種を親にしているので素朴さがあり、丈夫な品種が多いです。オールドローズ中心の庭づくりを表現するのに引き立て役にもなります。