この質問にお答えするには、バラの遺伝学的な説明が必要になります。
新しい品種を生み出すためには、見出したい理想のイメージを思い浮かべ、それに近いAの品種とBの品種を交配します。それにより生まれた実生苗の膨大な試作品の中から、数品種の作品が世に出ます。
この遺伝学的要素を理解して頂いた上で、ここに問題提起された、ツルバラが伸びずに四季咲きになってしまったという疑問にお答させて頂きます。
じつは、品種名が“つる”の〇〇となっている品種は、そもそも母体が四季咲き品種なのです。純粋なつるバラ(つるしかない品種、たとえばピンクのスパニシュビューティーなど)とは、生まれかたが異なります。
四季咲き品種の苗の生産過程で、芽が花を付けずにぐんぐん徒長する、つる性の性質を持った枝が現れること稀にがあります。新品種開発では、この枝を接いで増やし、“つる〇〇”と名付けます。例えば“つるブルームーン”と言うわけです。
先ほどご説明したように、そもそも元が四季咲きの品種であり、“四季咲き”が優性遺伝子なので、稀に出たつる性は劣性遺伝となります。
接ぎ木などで苗を増やす時、つるブルームーンを接いだのに四季咲きのブルームーンになってしまったということはこの様な意味合いがあります。俗に先祖帰りなどと言い、おおよそ1~2割の確率で出現します。芽がある程度成長し、時間が経ってからでないと判りません。
また、3~5年と年を経るに従って、つるバラだったものが四季咲きになってしまったという事例も多く見受けます。