バラに付く虫は沢山いますが、ここで取り上げる害虫はタバコガといいます。
とくに、秋の開花時期に多く発性し、大切な蕾を食害します。
タバコガ類は鱗翅目(りんしもく)ヤガ科の蛾の仲間です。ヤガ科は蛾の中でも大きな科ですが、その中にはヨトウガの仲間も含まれています。
タバコガ類の中で特によく見られるのはオオタバコガとタバコガです。特にオオタバコガはタバコガよりも幅広い作物を食します。バラにやってくるものの多くがオオタバコガです。
タバコガ類は蛾ですが、成虫・幼虫ともに昼行性です。産卵は5~11月の間に行われ、その中でも8~9月が多いです。そのため、その卵が孵化して幼虫成長中の9~10月により蕾に被害が出るのです。
1990年代から多く発生するようになり、西日本を中心にトマトやイチゴ、キャベツ等の果菜類や、バラを含むキキョウやカーネーションといった花卉類に対して大きな農業被害をもたらしています。果菜類では果実に、葉物野菜では巻いている葉に、花卉類では蕾に、それぞれ幼虫が潜り込み食害します。
1匹の幼虫が、いくつもの蕾や実を食べながら渡り歩くのが特徴です。そのため、幼虫の数は少なくてもそのわりに多くの被害が出てしまいます。
また、タバコガの幼虫は食べながら内部に潜り込みます。ですので、鳥や肉食昆虫などの捕食者から狙われにくいので天敵は少なく、表にいないため薬剤が効きづらかったり発見が遅れたりします。
一度タバコガ類の幼虫に潜り込まれてしまったバラの蕾は穴が開いてしまうため、うまく開かなかったり、開いても花弁が穴だらけで見栄えのしない花になってしまいます。
タバコガの駆除に最も有効なのは「捕殺」です。捕殺とは、見つけて捕まえることです。
日頃からバラをよく観察しましょう。地道ですが、それが最も有効な手段です。
葉裏や花にタバコガ類幼虫を見つけたら必ず駆除し、蕾や芽に穴や糞を見つけたら、近くにいないかどうか、穴の開いた蕾をほぐしたりして探すことが大切です。
幸いにも毒はありませんので、毒針の心配をする必要はなく、素手で取り除くこともできます。
また、タバコガ類の卵は蕾や芽などのやわらかな先端に産みつけられるため、卵がついていないかどうかをよく観察して確認することも有効です。卵を見つけた場合、軽くこすれば取り除けます。見つけた卵にたいして、潰したり薬剤散布する必要はありません。
防虫ネットも有効ですが、野菜と違ってバラには不向きです。
薬剤散布も有効ではありますが、オオタバコガは薬剤抵抗力があり薬剤が効きにくいです。タバコガという名はタバコの葉を食べても死なない頑丈さから来ています。
薬剤に強いタバコガ類幼虫ですが、幼虫が若いうちは薬がまだ効きます。しかし成長するに従って薬剤が効きにくくなります。
若齢期は一般的な殺虫剤のマラソン、スミチオンも有効ですが、老齢期では、フェニックス、ディアナ、プレオフロアブルなどの専用薬をお勧めします。