世界的なバラの育種家であるメイアン作出のシュラブローズですが、一般的にはつるバラとして取扱いされています。 50年以上の歴史があり非常にポピラーなつるバラでよく見かけられます。「コクテール」とも呼ばれ、名女優ロミーシュナイダー捧げられたバラです。 伸長力が強く多花性のうえ非常に目立つ花色だけに、満開時は株を覆うほど何百もの花を付けます。その景観は圧巻です。
園芸品種のバラはそれまで四季咲きの木立性の樹形が主でしたが、日本のノイバラなどとの交配によって、アーチやポール仕立てといった立体的にバラを楽しむことが出来るようになりました。
ここで注意しなくてはいけないことは場所やスペースに合った品種を選ぶことです。大きな花のつるバラは株も大きく育ちシュートも太いため、狭い場所には向きません。また一季咲きが主になります。
花もミニから中輪、大輪とあり、小輪になるほど枝も細く誘引しやすくオベリスクなどに向きます。その場所に合った系統の中から品種を選びます。
よくある事ですが、お店で衝動買いをして思いもよらず大きくなり後から支柱をする、これは良くありません。
はじめから計画性を持ち、しっかりしたイメージの上に支えとなる構築物を立て、その後に植え付けます。つるバラは成長が早く1~2年で立派なイメージ通りに仕上がります。その過程はわくわくして楽しいものですし、一面の花の様子は大変見事です。
つるバラはとくに手入れが欠かせません、2年ぐらいまでは伸びた枝を誘引していき全体の形を整えます、それ以降は冬場の本剪定がことさら重要となります。葉が無い時期なので全体の枝の様子が見てとれます。 まず、込み合った枝を整理して風通しを良くします、この時に大事なことは株元から出ている2~3本を主幹と定め、他の枝は株元から剪定します。 主幹は長いままにし途中からカットはしません、全体のバランスを見て誘引と剪定を行ってゆきます。
つるバラ全体に言える事ですが、新芽が伸びてから日が浅い時期は枝が柔らかく、無理に曲げようとするとポキッと切れてしまいますのでご注意ください。しかし、写真のように切れずに折れただけでしたら、さほど問題ありません。
しなやかに曲げるつもりがポキッと折れてしまっても、皮が一枚つながっていれば死ぬことはありません。バラは生命力が強いので、あまり気にしなくて大丈夫です。
もちろん、折れた先は元気がなくなりますし、折れないにこしたことはありません!
バラの切り花の世界では、アーチング法といって、枝をあえており下げ風通しをよくしたり他の枝を伸ばす手法もあるくらいです。
また、植物は陽に向かって上へ上へと延びて行きますので、どうしても裾元が空いてしまいます。それの解決策として伸びた枝を下に下にと誘引していきます。この技法で全体に花を咲かせます。
「誘引のアドバイス」でお話ししたことと枝を横に寝かせてあげることが大切です。また、せっかく付けた蕾を枯らす、春一番花の バラゾウ虫 の防除がとくに欠かせません。
品種によっての個別の注意はありませんが、一般的な病害虫の対策をお願いします。
バラの病害虫と対策についてカクテルによく似た品種にドルトムントという品種があります。
目立った花色の違いはドルトムントは花の中央部が白、カクテルは黄色というぐらいです。
こちらの写真はドルトムントです。
性格は対象的で、例えるならドルトムントが野生的で、カクテルは上品でまとまりやすいです。
ドルトムントは照葉(てりは)ノイバラの血を色濃く受け継いでいるため、葉は濃緑色の照葉で耐病性に優れ、年に3m以上も伸びます。ドルトムントは横に這うように力強く伸び、カクテルは上に伸びていくイメージです。
また、ドルトムントは株元からも丈夫で太いベイサルシュウトが多く発生し、その枝先には必ず花芽を付けてくれます。結果、花が絶えることがありません。当園のドルトムントも11月末日現在、元気に咲き誇っています。その強健さから国内でも良く見かけられる品種です。
バラに従事して50年弱になりますが、生産する品種も時代とともに様々に変わってきました。当園は、今のようにネット販売をはじめる以前(数十年前)は、市場販売が主だった時代がありました。そのなかで、「カクテル」1品種のみ生産し販売した年もあったんですよ!それほど、多くの人を魅了する品種です。
バラと長く生きるなかで、初期のモダンローズからオールドローズ、そしてイングリッシュローズと、沢山のバラと出合ってきました。それぞれの時代のニーズに合う品種を生み出す育種家の努力とそれを支える人。そして楽しんでいただくお客様。バラの世界は奥が深く魅力がいっぱいです。これから先、時とともにどの様なバラが世に出てくるか楽しみです。