こんにちは、篠宮バラ園です。
バラ栽培において、多くの方が頭を悩ませるのが「うどんこ病」や「黒星病(黒点病)」といった病気の対策ではないでしょうか。「毎回のスプレー消毒に手間がかかる」「できるだけ手軽に、かつ効果的に病気を予防したい」というのは、共通の願いかと思います。
今回は、当園のYouTubeチャンネルでもお馴染みの、KINCHO園芸(旧住友化学園芸)の“牛ちゃん”にお聞きした、病気専門の予防薬「マイローズ ベニカBT殺菌粒剤」の特徴や効果的な使い方について、分かりやすく整理してお届けします。
虫と病気の両方をカバーする定番の粒剤として「ベニカXガード粒剤」が広く使われていますが、こちらは年間の使用回数が「4回まで」と制限されています。そのため、春先と秋口に使うと、その間のシーズン(初夏から夏)には使用できないという課題がありました。
その課題を補い、間を埋める存在として活用されているのが、病気専門の予防薬「ベニカBT殺菌粒剤」です。
お薬の名前に付いている「BT菌」という言葉、初めて聞く方には少し難しく感じられますよね。
一言でいうと、BT菌とは化学合成された成分ではなく、「自然界にむかしから存在している安心な微生物(細菌)」のことです。実は、私たちが普段よく食べている「納豆菌」の親戚のような生き物でもあります。
お薬のパッケージの裏(成分欄)を見ると、正式には「バチルス チューリンゲンシス菌の生芽胞(せいがほう)及び産生結晶毒素(さんせいけっしょうどくそ)」と少し難しい名前で書かれています。
これは簡単に説明すると、以下のような2つの要素でできています。
「毒素」と聞くとドキッとしてしまいますが、この毒素はイモムシやアオムシのアルカリ性の胃袋に入ったときだけ反応して、お腹を壊させるという性質を持っています。
人間や犬・猫などの哺乳類の胃袋は「酸性」のため、この毒素はまったく反応せず、そのまま消化されてしまいます。そのため、特定の虫にだけ効いて、人やペットには非常に安全な成分として認められているのです。
園芸や農業の世界ではとても歴史があり、もともとは安全な虫除けとして長く使われてきました。しかし研究を重ねる中で、「この菌をバラの株元にまいておくと、なぜか病気にかからなくなる」という効果が発見され、現在の予防薬としての活用につながっています。
商品名に「殺菌」という言葉が入っていますが、実は植物に付着した病原菌を直接殺す成分ではありません。
日本の農薬のルール(法律上の分類)では、病気を防ぐお薬はすべて一括して「殺菌剤」と呼ぶ決まりになっているため、このような名称になっています。
実際の働きは、人間の予防接種に近い作用です。粒剤(BT菌)を土にまくことでバラの根に刺激が伝わり、植物全体に「病気に備えよ」という指令(抵抗性誘導)が行き渡ります。これにより、バラ自体が自らの「抵抗力(免疫力)」を底上げし、病気にかかりにくい体質を作ります。
すでに発病してしまった葉を治す「治療効果」はないため、公式ページにもある通り、あくまでも病気が出る前の「発病前(初期予防)」に使用することが大切です。
「ベニカXガード粒剤」と「ベニカBT殺菌粒剤」を上手につなぎ、年間を通して病気をブロックするためのスケジュール案です。
※バラの生育や害虫の発生時期は、お住まいの地域やその年の気候によって異なります。以下のスケジュールはあくまでも目安としての参考例ですので、ご自身の庭の様子に合わせて調整してください。
| 時期・タイミングの目安 | 使用する薬剤 | 目的とポイント |
|---|---|---|
| 春先(4月〜5月頃) ※ソメイヨシノの開花が目安 |
ベニカXガード粒剤 (年4回制限のうち2回分) |
春先に一斉に増え出すアブラムシなどの害虫を抑えつつ、初期の病気もダブルで予防します。 |
| 初夏〜夏(間を埋める期間) | ベニカBT殺菌粒剤 | ガード粒剤が使えない期間を埋めるため、3週間〜1ヶ月おきに定期的にまき、夏場の病気への抵抗力を維持します。 |
| 秋ごろ(10月〜11月頃) | ベニカXガード粒剤 (残りの2回分) |
気温が下がり、再び害虫(アブラムシ等)や病気が活発になる秋のバラをしっかり守ります。 |
※もし途中でうどんこ病や黒星病が発生してしまった場合は、粒剤ではなく「ベニカXネクストスプレー」や「マイローズ殺菌スプレー」などの、菌を直接殺菌できる治療用スプレーで対処してください。
篠宮バラ園のInstagramで募集した、皆様からの具体的な質問について牛ちゃんに解説していただいた内容です。
A. どちらも同じBT菌を含んでいますが、「用途(登録)」と「製法」が異なります。
ナチュラルスプレーに配合されているBT菌は、主にイモムシなどの害虫をターゲット(殺虫成分)として登録されています。一方、BT殺菌粒剤は「植物に抵抗力をつけさせて病気を予防する(殺菌成分)」として登録されています。また、液体の中では腐敗しやすい生きた菌を、独自の技術で乾燥(休眠状態)させて日持ちするように作られているのも粒剤の特徴です。
A. 併用自体は問題ありません。
オルトランは害虫用、BT殺菌粒剤は病気用ですので、お互いの効果を補い合えます。ただし、同時に混ぜてまくのは避けてください。オルトランを土に混ぜ込んだあとに、BT殺菌粒剤を上からばらまくなど、直接触れ合わない工夫をしていただくと安心です。
A. はい、水やりをしてください。
土の表面に置くだけでなく、水がかかることで粒の中の菌が土壌へ染み込んでいき、根に作用します。風で飛ぶのを防ぐ意味でも、散布したタイミングで軽くお水をかけるのが確実です。
A. 植物や哺乳類に対する安全性は非常に高い成分ですが、取り扱い時の接触には注意が必要です。
BT菌そのものは自然界にいる微生物なので、万が一少量口に入ってしまってもお腹を壊すような強い毒性はありません。ただし、本剤は「眼や皮ふへの刺激性」があるため、特に肌の弱いや方やお子様が直接触れると、かぶれの原因になることがあります。安全のため、散布する際は手袋や長袖を着用し、まいた後は表面の土を軽く混ぜて、ペットやお子様が直接粒に触れないようにしておくとより安心です。
「ベニカBT殺菌粒剤」をローテーションにうまく取り入れることで、重い噴霧器を用意したり、頻繁に薬剤をスプレーしたりする肉体的な負担を大きく軽減することができます。
「いかに無理なく、長く家庭園芸を楽しめるか」を考えて作られた、非常に現代的なアプローチの薬剤だと感じます。
ぜひ皆様のバラの管理計画の参考にしていただければ幸いです。より詳細な開発秘話や、土壌の微生物に関するマニアックなお話に興味がある方は、ぜひYouTubeの動画本編も合わせてご覧ください。