「肥料を全くあげなくても、バラがすぐに枯れることはない」と園主はいいます。顔色(葉の色)が少し悪くなるくらいで、致命傷にはなりません。
本当に怖いのは「あげなさすぎ」ではなく、実は「あげすぎ(過剰摂取)」なのです。必要以上の量を与えてしまうと、バラには以下のような障害が出てきます。
* 葉焼け・根焼け:土の中の肥料濃度が高くなりすぎると、デリケートな根が傷んでしまいます(※詳しい仕組みは次の章で解説します)。そのSOSサインとして、葉の周りがだんだん茶色く焼けたように変色してしまいます。
* 木ボケ(きぼけ):肥料に含まれる「窒素(チッソ)」は枝葉を伸ばす栄養素です。これが多すぎると、枝ばかりが異常にどんどん伸び、葉っぱが巨大化し、肝心の「花を咲かせるモード」に株が切り替わらなくなってしまいます。
* 病害虫に弱くなる:窒素過多で急激に伸びた枝葉は、組織がとても柔らかくなります。すると、虫たちにとって「柔らかくて食べやすい格好の的」になってしまい、虫が寄り付きやすくなります。
園主は動画の中で、強い化成肥料について「ナトリウム系統なのかな、塩分というか、傷口に触るとピリピリするような強い刺激がある」と表現しています。
「根焼け」という言葉を聞くと、まるで土の中で根っこが熱を持って燃えてしまうようなイメージがありますよね。でも、実はそうではないんです。正体は、根っこが「水分をギューッと吸い取られて、カラカラに乾いてしまう現象(浸透圧)」を指します。
植物の根っこは、土の中の水分を吸い上げて生きています。しかし、土に肥料をドバッとたくさん入れてしまうと、土の中の栄養成分がバラの根っこの中よりも、はるかに「濃い状態」になってしまいます。
自然界には「濃いものがあると、それを薄めようとして水分が引っ張られる」という不思議な性質があります。
土が濃くなりすぎると、この性質のせいで「根っこが水を吸う」のとは逆に、「根っこの中にある大切な水分が、濃い土のほうへとどんどん吸い出されてしまう」という逆転現象が起きてしまいます。
分かりやすいのが、ナメクジに塩をかけると縮んでしまう状態です。塩分という「濃いもの」に水分を奪われているのですが、これと全く同じことがバラの根っこで起きてしまうのです。
水分を限界まで奪われた根っこは、細胞が破壊されて死んでしまいます。
園芸で「根腐れ」というと水のやりすぎ(酸欠)をイメージしますが、このように肥料のやりすぎで根の細胞が死んでしまった場合も、最終的には死んだ根が土の中で黒く腐っていくため、同じ「根腐れ」の状態になってしまうのです。
※根腐れについて詳しい動画はこちら
お店に行くと色々な肥料が並んでいますが、大きく分けると「化成肥料」と「有機肥料」の2つがあります。それぞれ性質が全く異なります。
* 化成肥料(化学肥料):鉱物などを化学的に製造したものです。成分(チッソ・リン酸・カリ)がしっかり数値化されており、パッと効く「速効性」が強みです。ただし、そのぶん濃度が高いため、量を間違えるとすぐに株を傷める難しさもあります。
* 有機肥料:油かすや牡蠣殻など、自然界にあるものを利用した肥料です。こちらは土の中で微生物によって発酵・分解されて初めて効果が出ます。効果が「穏やか」なので大失敗しにくいのがメリットです。
多くの園芸書には「植え付けや植え替えの時には、土に元肥(もとごえ)を混ぜましょう」と書いてありますよね。しかし、篠宮バラ園では元肥は基本的には入れません! これが一番失敗しない秘訣です。
市販されているバラ用の「培養土(倍土)」には、牛糞や腐葉土、ピートモスなどがバランスよく配合されており、すでに微量の栄養がきちんと含まれています。
お庭に新しく植え付ける苗や、鉢を大きくする植え替え直後のバラは、人間で言えば手術が終わったばかりのような状態。そこに強い化成肥料などを混ぜ込んでしまうと、新しい根がすぐに焼けてしまいます。
また、「穏やかな有機肥料なら土に混ぜても大丈夫では?」と思いがちですが、これも避けてください。
有機肥料は、土の中の微生物に分解されることで初めて栄養に変わるのですが、土の中でその分解がスタートすると、実はかなりの「熱」と「ガス」が発生します。
逃げ場のない土の中で熱がこもると、バラのデリケートな根っこがまるで「お湯で茹でられたような状態」になってしまい、呼吸ができずに弱ってしまうのです。
「じゃあ、後からあげる肥料は何がいいの?」という初心者の方に園主が太鼓判を押すのが、当園の生産現場でも長年愛用している「IB肥料」です。
バラ栽培で一番大切なのは、太陽、水、そして肥料のバランスです。これらはすべて「多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ」という共通点があります。
「乾ききっていないのに、早く大きくなってほしいからと毎日水をあげる」
「まだ栄養を吸えない状態なのに、よかれと思って肥料をたくさんあげる」
これらは人間の都合であって、バラの気持ちには寄り添えていませんよね。
バラが「あぁ、水が乾いて喉が渇いた!お水が美味しい!」「しっかり根が張ったから、そろそろ栄養が欲しいな!」というタイミング(気持ち)を見極めて、少し足りないくらいの量からアプローチしていくこと。それができるようになると、バラ育てがどんどん楽しく、上手になっていきますよ。
少しずつ経験を重ねて、お庭のバラを美しく咲かせてみてくださいね。