チュウレンジバチによる害というのはどれも特徴的です。
チュウレンジバチによる被害で一番甚大なのは葉の食害でしょう。
イモムシの大群が瞬く間に葉を食い荒らしていく姿は悪夢のようです。
また、もう一つ心配になる被害が成虫による産卵です。
緑色の若い枝に、縦に切れ目が入っている、またはそれが割けそうになっていたら、それはチュウレンジバチの産卵痕かもしれません。
チュウレンジバチのメス成虫は、枝に縦の切り込みを入れながらその中に産卵します。
この傷自体がバラの生育に大きな影響を及ぼすことはありません。しかし、その傷口から菌やウイルス等が侵入し病害が発生する可能性は否定できません。
また、卵が孵化するとその切れ目が開くので、枝に大きな傷ができてしまいバラ株の美観を損ねてしまいます。
さらに、中に卵がある状態でそのままにしておけば1週間程度でおびただしい数の幼虫が孵化し出てきて、その幼虫たちが葉を食い荒らすことになります。
○幼虫の場合
チュウレンジバチの幼虫は、孵化して間もないうちは集団で生活します。一枚の葉に群がることもよくあります。
一か所に集まっている場合は、集まっている葉ごと取り除きましょう。
小さいうちは集団でいる幼虫は大きくなると次第に分散していきます。
分散してしまっている場合は1頭ずつ取り除くか、一般的な殺虫剤やベニカR乳剤などを散布してください。
※関連ブログ:スタッフが効果を実感している薬剤 ベニカR乳剤 尺取虫、チュウレンジバチ
○成虫の場合
チュウレンジバチの成虫はフワフワとゆっくり飛びます。また、産卵のために枝に止まるとじっとしていることが多いので、飛んでいても止まっていても捕まえるのは簡単です。
刺さないので手でつまんで捕まえることもできます。
しかし、飛んでくる1頭のチュウレンジバチは自然界に存在するたくさんのチュウレンジバチたちの中の一つにすぎません。1頭捕殺したところで他のチュウレンジバチがやってくることでしょう。
捕殺だけでは埒が明かないので、薬剤散布を基本にしつつ、バラにチュウレンジバチが来ているのを見かけた場合は捕まえるか追い払うのが良いでしょう。
○産卵痕の場合
まだ卵が孵化していない場合、つまようじ等の細長い針を切れ目に挿し入れ、中の卵を潰してしまいましょう。潰す時は中の卵は2列になっていることを意識して潰しましょう。枝の裂傷は残りますが、幼虫が孵化してくることはありません。
卵を潰した後は1週間程度観察し、切れ目が開いていないか確認してください。もし開いていた場合は潰せていなかった卵が孵っているかもしれません。
チュウレンジバチは幼虫成虫ともに薬剤が有効です。特別効きにくかったり耐性が強かったりすることはありません。
薬剤散布することで、成虫による産卵と幼虫による葉の食害を防ぎます。
また、殺虫剤ですのでチュウレンジバチに直接薬剤がかかれば殺虫できるでしょう。
一般的な殺虫剤をはじめ、オルトラン、マラソン、スミチオン、アドマイヤー等を使用することで、他の害虫も合わせて予防できます。
チュウレンジバチとは、ハチ目ミフシハバチ科に分類されるハバチの仲間です。
ハバチというのは、漢字では葉蜂と書き、幼虫時代に葉を食べる蜂のことです。
チュウレンジは漢字で「鐫花娘子」と書き、花の茎に切り込みを入れて産卵する生態を表しています。
書籍・他Webサイト等では「チュウレンジ“ハ”バチ」と表記していることが多いですが、チュウレンジバチとチュウレンジハバチは同じものです。
(和名表記というものは、同じ種を指しているのに表記揺れや別名があることが多いのです。困ったものです……)
バラにやってくるチュウレンジバチの仲間は3種ほど(チュウレンジバチ・ニホンチュウレンジ・アカスジチュウレンジ)います。
どれも成虫幼虫ともに見た目・生態はよく似ていて、バラへの加害方法も同じです。
成虫は体長8㎜程度の小さくて黒っぽいハチです。お腹がオレンジ色でよく目立つのが特徴です。
毒は無く刺さないので、触っても危険はありません。
幼虫は警戒する時に、しゃちほこのようにお尻を上げる特徴的なポーズを取ります。
チュウレンジバチは薬剤耐性が低いので、他の病害虫防除の薬剤散布で予防することができます。
しっかりと薬剤散布をしつつ、日々バラを観察しながら産卵痕や成虫の来訪が無いかを確認することでチュウレンジバチからバラを守っていきましょう!