「家で育てているバラが急に元気がなくなった」「葉が黄変してしまった」というお問い合わせをお客様からよくいただきます。
バラの元気がなくなったり葉が黄変する原因は、そのバラの置かれている環境や管理方法などによって変わりますが、それでも複数考えられます。時にはいくつもの原因が重なっている場合もあります。
その複数ある原因の中のひとつに、「コガネムシ類の幼虫による根の食害」があります。
植物にとって根は心臓のようなものですので、その根が害されているのを放っておくとあっという間に枯れてしまうかもしれません。
コガネムシ類はバラに対して、幼虫と成虫で別の被害を与えます。それぞれ見ていきましょう。
○幼虫の場合
コガネムシ類の幼虫は、バラの根を食べ、株を弱らせてしまいます。
土の中で卵から生まれた幼虫は植物の根を食べて成長します。成長のための食事ですので、食べる量が非常に多く、他に食べるもの、例えば周りに他の木や株が無い場合は木が枯れてしまうほどの被害が出てしまいます。特に鉢植えで顕著です。
コガネムシ類の幼虫は土の中にいるため、外から眺めるだけではいるかどうかわかりません。幼虫による根の食害があると、次のような症状があらわれます。
・バラ株の元気がなくなる
・葉がたくさん黄色になる
・水やりをしても水がはけにくい
・苗を揺らすとグラグラする 等
○成虫の場合
コガネムシ類の成虫は葉を食べるものが多く、バラに対しては葉や花弁を食べます。
多少葉が食べられる分にはバラへの影響は少ないですが、コガネムシ類の成虫はかなりの量の葉を食べるため、あっという間に葉を食べ尽くしてしまう場合もあります。
また、コガネムシ類成虫はよく飛びます。遠くから飛んでくるため、バラに来ている虫を駆除しても被害が完全になくなるわけではありません。
コガネムシ類は先述のとおり成虫と幼虫で害が違いますので、防除もそれぞれ別で行う必要があります。
成虫は遠くから飛んできて葉を食べるため、予防するのはとても難しいです。予防できないと考えた方が良いでしょう。
ずっと居着いて葉を食べ尽くしてしまいそうでしたら、取り除いて遠くに放るか、一般的な殺虫剤をご使用ください。
幼虫は土の中にいます。
鉢植えのバラで、根が食害されている疑いがある場合、苗を鉢から抜き取り、幼虫がいないか観察してみてください。この時、根を傷つけないよう、土を崩さないように気をつけましょう。幼虫は鉢の下のほうにいることが多いです。見つけた場合は取り除きましょう。
鉢に戻した後、もしくは見つからなかった場合や地植えの場合は、ダイアジノン粒剤やオルトラン粒剤といったコガネムシ類幼虫に効く薬を土に散布しましょう。土の中にもしコガネムシ類の卵があっても、薬剤を撒いておくことで孵化した途端に薬が効きます。
鉢を土の上に置いている場合、コガネムシ類幼虫は鉢の下から侵入してきます。これを防ぐために、あらかじめ鉢底ネットを使用し下から来る幼虫を通さないことが予防として有効です。
つまり、幼虫対策は薬剤と鉢底ネットが有効ということです。
バラを害するコガネムシ類は、バラしか食べられないわけではありません。それは幼虫も成虫も同じです。
コガネムシ類の多くは広葉樹であれば何でも食べます。種類によっては針葉樹も食べるものもいます。多少の好き嫌いはありますが、数多くある植物の中で、たまたまバラを食べているにすぎないのです。
また、バラが園芸植物であることもコガネムシ類がバラに集まる理由のひとつでしょう。品種改良を繰り返した植物は、植物本来の自衛能力が弱まってしまうことがあり、それによって野生の植物よりも虫にとって食べやすくなってしまい、虫が集まるのです。また、お庭という人工的な空間では害虫の天敵が少なく、害が出やすいというのもあります。
バラにはさまざまなコガネムシ類が集いますが、バラにやってくるコガネムシ類の全てがバラに害を与えるわけではありません。いるだけで害だと言われてしまえばそれまでですが、その中にはただ花粉や蜜を食べているだけ、もしくはただ葉に乗って休んでいるだけのコガネムシ類もいるのです。日本にはコガネムシの仲間が約360種もいると言われていますので、バラに対してどうであるかも多様性があるのです。
バラでよく見られるコガネムシ類にはどんなものがいるのでしょうか。ご紹介します。
○アオドウガネ
大きさ1.5~2.5㎝ 成虫時期5~10月
おそらく、関東以南の多くの人にとって最も目にする機会の多いコガネムシの仲間です。また、「コガネムシ」と呼ばれているもののほとんどがこのアオドウガネである可能性が高いです。
アオドウガネは丸っこく可愛らしい見た目に反して、バラにとっては成虫・幼虫ともに大きな害を及ぼします。また、とても数が多く非常に厄介な害虫です。
幼虫は、カブトムシの幼虫と似た姿をしていますが、カブトムシよりもふた回りほど小さく足が長いのが特徴です。
成虫は横から見ると鮮やかな緑色、上から見ると渋い緑色でと角度で色が変わります。形は丸っこく、おしりやからだに毛が生えてふさふさです。夜行性で街灯などの灯りによく集まります。
○ナガチャコガネ
大きさ1.0~1.4㎝ 成虫時期6~8月
薄皮のついたピーナッツのような色・形・大きさのコガネムシです。黄褐色で表面はツヤツヤしています。
ナガチャコガネは、幼虫による根の食害がとても多いですが、成虫はあまり問題になりません。しかし、幼虫は小さく数が多いため、アオドウガネに次いで厄介な害虫といえるでしょう。
○ビロウドコガネ
大きさ0.7~1.0㎝ 成虫時期4~10月
黒大豆のような黒くて丸いコガネムシの仲間です。名前のとおりベルベット生地のようなマットな光沢があります。近い仲間で少し細長いものや茶色いものもいます。
成虫は葉や花弁を、幼虫は根を食べますが、アオドウガネやナガチャコガネほど数は多くなく、ビロウドコガネだけで甚大な被害が出ることはないでしょう。
○マメコガネ・セマダラコガネ
○ハナムグリの仲間
ハナムグリの仲間もよくコガネムシとひとまとめにされがちですが、ハナムグリは花粉や花の蜜を食べているだけなので、バラに特別大きな危害を加えることはありません。ハナムグリという名は「花潜り」から来ています。葉を食べるコガネムシ類の口には葉をちぎるための鋭いあごがありますが、ハナムグリの口はブラシ状であるため、かたい葉を食べることはできません。
しかし、固いからだでやわらかい花の上に乗るため、花弁を傷つけてしまうことがあります。また、ちゃっかり花弁を食べていることもあります。